2017-09-01から1ヶ月間の記事一覧
外はすっかり暗くなっていた。Timestarに向かう細い道に入った。そこには何やらうごめく影。闇に紛れたインド人たちだ。一人の白目が月に反射して輝いた。憎しみに満ちた目が、じっとこちらを見据えた。いつものように、なに食わぬ顔で、胸を張り、足早に通…
カルカッタで中心的な道路となるチョーロンギー通りには、地下鉄が走っている。カルカッタを動くには、この地下鉄を使うとすごく便利だ。サダル・ストリートの近くにはパーク・ストリート駅があった。まずは、その駅に向かった。 Timestarからは二分も歩けば…
Timestarのこの安い部屋に居座るならば、トイレは耐え得るものであるかどうか見極めねばならない。今は悪臭を放っている。しかし、まずは百二十の部屋が空くまでだ。それなら問題はない。 「とりあえずここでもいいよ」 そう言うと使用人は下に戻って行った…
Timestarは細い道からさらに奥に入った所にあった。ドアなどない。でかい入り口の目の前がフロントだった。そこにはターバンを巻いたでかい男が座っていた。落ちつきはらって、わずかにこくりと頷いた。貫祿がある。 「部屋を探している」 「どの位の部屋が…
なんとも寝苦しい夜だった。窓を開けたが、六階の部屋でもわずかな風すら吹いていない。シャワーを浴びてすっきりさせたが、それもカルカッタの湿気には無駄な抵抗だ。頭を拭いている間に、体は汗が混じってますます濡れた。 部屋は、値段が高いだけあって広…
町らしき明かりが見えて来たときは、正直ほっとした。まだ開いている食堂があった。大丈夫だ。何とかなる。もう少しで無事宿を見つけるだろう。ようやく自分の一時間後が想像できるようになってきた。そんなとき、町の明かりが通りで蠢くものを薄く照らした…
飛行機がカルカッタのダム・ダム空港に着いた頃は、夜十一時を回っていた。急がねば。当然のことだが外は真っ暗だった。そして、‘むっ’とした空気が私を迎えた。飛行機から足を踏み出して直ぐに感じた。蒸し暑い。ひどく蒸し暑い。名古屋の蒸し暑さも比べ物…
リクシャーを拾って空港行きのバスが出ているターミナルに向かった。そこは近郊だけでなく、長距離の色々なバスが出ていて、どこに行けば空港行きがあるのかさっぱり分からなかった。どうやって見つけようかと考えていると、おじさんが寄ってきて教えてくれ…
チャンドニー・チョウクはメインバザールに車道がついたようなものだ。服屋、雑貨屋、食堂などが並ぶ。どの店も小さい。小さな店に沢山置こうとするから、服なんかは二段、三段、四段と上に上にとつり上げられている。店が並ぶ中に寺院もあって、入り口前で…
ラール・キラーは赤い城という意味だ。アグラ城と同じで赤砂岩でできている。しかし、油断をすればすぐに割り込まれてしまう混雑した売り場から切符を奪い取るように買って入ってはみたものの、特に何があるわけでもない。時間は二時を回っていた。暑さと空…
汚染された砂と分かると、舞う土埃が気になってきた。しかし、私は一時的な通過者に過ぎない。スラムの人々はこの埃の中で暮らしているのだ。痩せた牛が池の水を飲んでいる。人はその牛の乳を飲み、肉を食べるのだろう。子供が泥土にまみれて遊んでいた。身…
ラージ・ガートは独立の父、マハートマ・ガンジーが荼毘にふされたところだ。礼儀として入口で靴を脱がねばならない。そこには男が座っていて勝手に靴を見張っている。彼の目の前に靴を置けば金をとられる。これは彼の仕事である。でも、私には必要ない。だ…