目的地へ行こう

まだたどり着いていない人のブログ。

旅先の勘

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 チャンドニー・チョウクはメインバザールに車道がついたようなものだ。服屋、雑貨屋、食堂などが並ぶ。どの店も小さい。小さな店に沢山置こうとするから、服なんかは二段、三段、四段と上に上にとつり上げられている。店が並ぶ中に寺院もあって、入り口前で足を洗った人々が、裸足のままで入って行く。この通りも混み合って騒がしい。車道には車とリクシャーが走り、歩道から溢れた人々も歩いている。何故か男が大半で、買い物をしている女の子はあまり見た記憶がない。それに、手を繋いだ男同士は多いのだが(「歩いて見える風景」)、手を繋いだ男女はまったくいなかった。

 安くてうまいという話だったので、チャンドニー・チョウクの食堂で昼食をとろうと思った。食堂を選ぶ際は、安くてバイ菌の少なそうなところにする。味はあまり関係ない。強烈に辛いものを除けば、ほとんどのものは食べられる。安さと清潔さを第一に考えて、その時その時で良さそうな所を見極める。でも、度々腹を壊しているので、私の目はそれほどあてにならないのかもしれない。第一、見極めるといっても、何かを測っている訳ではないから、結局は勘で選んでいる。だが、適当に店を選んでいたら、もっと腹を壊していただろうと思っている。それに、この勘というのは旅先ではあてになるものだ。

 

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 タイのナコーン・パトムにある仏塔で、不思議なことが起こった。旅に出てからひと月たっており、暑い中長い距離を歩き、満杯のバスに二時間ガタガタ揺られて疲れ切っていた。その仏塔では正確に東西南北に階段が伸びている。階段を登ったところで仏塔の周りをゆっくり歩いていると、東側の階段まで来たときに、そこにある石像が、ふと目に入った。何故か気になる。そして、その方角で、何故か呼んでいる気がした。一体なんだろうと私は立ち止まり、石像と階段の方角を眺めた。そのまま通り過ぎてはいけないような、そんな感じをもった。だが、どうしても何が私の足を止めさせたのかは分からなかった。気のせいにしてはあまりにはっきりと感じるものがあった。すっきりはしなかったが、結局そこは通り過ぎ、北側の階段から下に降りて、次の目的地に向かうバス停を目指した。しかし、思ったところにそのバス停はなかった。二度、三度と道を聞き、やっと目当てのバス停にたどり着いてみれば、なんとそこはあの方角にあったのだ。仏塔から見てどうしても気になった東の方角に。

 

 また、タイのピーピー島で明るい道から暗い道に入った時のことだ。すぐに嫌な気配を感じた。誰かが見ている。それも殺気だっている。横目で周りを見やった。いた。暗闇に紛れ、私をじっと見ている人間が。しかも、両サイドに何人も。すぐに引き返した。

 

自分の身と財産を守るために、旅先では神経が張り詰めている。そこでは感覚はとても研ぎ澄まされ、自分のもてる力を総動員して状況を判断しようとする。そんな中での勘だ。鈍いわけがない。だから私は旅先の勘を信じている。

 今回私の勘が選んだ食堂は、汚い中でもましだった。テーブルと椅子は古かったが、しっかりと拭かれていた。壊れた蛍光灯は、店の主人がせっせと直していた。料理をしている所は通りから見え、十二分に火が通されているのがよく分かった。

 まず、ミリンダを頼み、ストローで飲みながら食事を注文した。火を通した辛くないチキンとライスだ。そして、値段はジュースも合わせて五十ルピー程。衛生面も値段も丁度いい。こんな店を宿の近くに見つければ、食事も十分にすることができる。ほとんどの町では良い店を見つけた頃に移動してしまうので、なかなか食事事情がよくならない。次のカルカッタでは良い宿と良い食堂をすぐに見つけられるだろうか。そんなことをぼんやり考えた。

 特に今回は今日泊まる宿が心配だった。なんといっても夜の十時すぎにカルカッタに着く予定だったからだ。新しい町にはできるだけ太陽が登っている時間に着くようにしている。やはり夜は危ない。暗くなってからバッグを背負ってうろうろしている旅人を見れば、ちょっと金に困っている奴なら狙いたくなるだろう。自ら‘獲りにおいでよ’と誘惑するようなものだ。

 

 マレーシアのクアラルンプールに夜十時に着いたときがあった。ある宿を目指して駅から歩いたのだか、そこに空室はなく、さらに周りにある宿は全て高かった。安宿が集まる別の所は二キロメートルほど離れていたが、リクシャーも見当たらず、しょうがなく歩いて行くことにした。途中ひと気のない真っ暗な道は、中央を足早に通り過ぎたりしながら(脇から突然引っ張り込まれないようにだ)、やっと安宿の集まる所に着いた。しかし、なかなか空いている宿が見つからず、一時間以上彷徨ったあげくにようやく部屋を確保した。時間は十二時すぎだった。

 

 この時も止むを得なく夜に着いたのだが、マレーシアの大都市クアラルンプールより、カルカッタの方がはるかにきついことになりそうな嫌な予感がしていた。