デリーに戻ってきた。なぜか懐かしくほっとする。東南アジアを回ったときも、旅の中心地となったバンコクに戻る度にほっとした。デリーはからっとしている。この気候もカルカッタよりいい。
バスに乗ってニューデリー駅まで行く。少し歩いてから、暑さに負けて人リクシャーに乗った。向かうはジャマー・マスジッド。インド最大のモスクである。以前に行ったラール・キラーの近くにある。
チャウリー・バザールという細い道に入りモスクが近づいてくると、顔を黒い布で覆った女性が増えてきた。薄手の布で向こうからこちらは見えるのだろうが、こちらから顔はまったく見えない。
宗教的な雰囲気が色濃くなっていくのだが、このチャウリー・バザールというのは別名泥棒バザールとなっている。泥棒が多いのだ。狭い道に人が密集している所で、リクシャーはよく立ち往生してしまう。スリには絶好の場所でありそうだ。それに、ここで売っているものの中には、盗んできたものが置いてあるそうだ。宗教的な聖なるものと、盗みという俗も俗なるものが混ざり合っている道である。ここにもインドの多様性が出ている。
ジャマー・マスジッドは丁度礼拝の時間になるところだった。もちろん、イスラム教徒でないと入れない。その間、日本行き航空券のリコンファームをすることにした。電話屋(電話が置いてあり、かかってからの時間を計って料金をとる)を探し、エア・インディアに電話した。それが、エア・インディアの対応はまったくもってひどかった。応対の話し方がなってないというのではない。それ以前である。まず電話が繋がらないのだ。なかなか繫がらない。三回目に一分間は鳴らし続け、やっと繋がった。ところが「リコンファーム、プリーズ」の一言だけ話してから、「ジャストアモーメント」と待たされた。それから三分も出てこない。切ってしまった。こっちは時間が延びれば延びるほど金をとられるのだ。それからまたなんとかつなげた。今度こそはと、「リコンファーム、デリートゥトーキョー、トゥデイ~」と一気にまくし立てた。だが、またしても向こうはジャストアモーメントと叫び、電話口から離れた。今度は五分待って切った。インドの航空会社の最王手、エア・インディアでもスムーズに事は運ばない。
そうこうしているうちに時間が経ったので、リコンファームはとりあえずおいといて、ジャマー・マスジッドに入った。階段を昇れば、草野球ができそうな広さの広場に入る。ここに人が集まり祈りを捧げる。しきたりに従い裸足で入ったため、とても熱い。ラージ・ガートと同じだ。むしろの通路を歩いても、熱くてしかたがない。インド人の足の裏はやっぱり厚い。赤レンガの上だってゆっくり歩いている人がいる。こっちは耐えられないので、モスクの日陰に腰を下ろした。