何故ハードな旅をするのか。やっぱりそれは一言でいうならば、“刺激”、ということだろう。何かやっていないと気が済まないので、毎日刺激があって初めてバランスがとれてくる。そういう刺激がないと退屈でたまらなくなる。今日は一日何もやることがない、なんて日はどうしようもなく不快でイライラしてきてしまう。このイライラはどうにも抑えようがない。
刺激が先かイライラの解消が先なのかは分からないがとにかくそういうもののために旅を選んだ。最初はハワイなんてかわいらしい所から始まった。そこで、‘これは結構刺激があって面白いぞ’なんて海外旅行の味をしめ、だんだんより多くの刺激をもとめてエスカレートしてしまった。そして、ぎりぎり限界のところまで頑張って自分の力を試そうとまでしている。価値観が違い、今までの経験がまったく通用しなくて、自分の力を頼るしかない状況でどれだけやれるか、試したいのである。そして、その時の緊張感がたまらないのである。この緊張感というのは決して生まれ育った土地にいては味わうことはできない。まったく知らない人、分からない土地、違う価値観の中で生きていかねばならないという緊張感である。
とにかく、一人で歩こうと思ったら、危険を避けなければならない。まず、ここから始まる。しかし、危険を避けるからといって、恐れのあまりに行動しないわけではない。ぎりぎりのところで危険を避けるのだ。生と死の境目をさ迷ったということではないけれども、自分の死というものを現実感をもって考えたことは、何度かあった。どこまでなら大丈夫か考え、もうこれ以上は本当に危ない、と思ったところで回避する(運が良かっただけかもしれないが、うまく回避したつもりになっている)。危険を避けようとしているからこその緊張感である。
まず、無事に帰れないかもしれない地域を見極め、そこには踏み込まない。それから、食べられる物を探さねばならない。病気にならない食べ物を。‘これは食べて平気だろうか’なんて食事の度に気をつけなきゃならない生活だ。そして、毎日の寝る宿の確保も大事だ。暗くなっても宿が見つからなかったときに感じた不安は、今でもはっきりと思い出す。