目的地へ行こう

まだたどり着いていない人のブログ。

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暗闇~その2

町らしき明かりが見えて来たときは、正直ほっとした。まだ開いている食堂があった。大丈夫だ。何とかなる。もう少しで無事宿を見つけるだろう。ようやく自分の一時間後が想像できるようになってきた。そんなとき、町の明かりが通りで蠢くものを薄く照らした…

暗闇~その1

飛行機がカルカッタのダム・ダム空港に着いた頃は、夜十一時を回っていた。急がねば。当然のことだが外は真っ暗だった。そして、‘むっ’とした空気が私を迎えた。飛行機から足を踏み出して直ぐに感じた。蒸し暑い。ひどく蒸し暑い。名古屋の蒸し暑さも比べ物…

カルカッタへの準備

リクシャーを拾って空港行きのバスが出ているターミナルに向かった。そこは近郊だけでなく、長距離の色々なバスが出ていて、どこに行けば空港行きがあるのかさっぱり分からなかった。どうやって見つけようかと考えていると、おじさんが寄ってきて教えてくれ…

旅先の勘

チャンドニー・チョウクはメインバザールに車道がついたようなものだ。服屋、雑貨屋、食堂などが並ぶ。どの店も小さい。小さな店に沢山置こうとするから、服なんかは二段、三段、四段と上に上にとつり上げられている。店が並ぶ中に寺院もあって、入り口前で…

ココナッツ

ラール・キラーは赤い城という意味だ。アグラ城と同じで赤砂岩でできている。しかし、油断をすればすぐに割り込まれてしまう混雑した売り場から切符を奪い取るように買って入ってはみたものの、特に何があるわけでもない。時間は二時を回っていた。暑さと空…

スラム

汚染された砂と分かると、舞う土埃が気になってきた。しかし、私は一時的な通過者に過ぎない。スラムの人々はこの埃の中で暮らしているのだ。痩せた牛が池の水を飲んでいる。人はその牛の乳を飲み、肉を食べるのだろう。子供が泥土にまみれて遊んでいた。身…

精悍な顔つきの人リクシャー 運転手

ラージ・ガートは独立の父、マハートマ・ガンジーが荼毘にふされたところだ。礼儀として入口で靴を脱がねばならない。そこには男が座っていて勝手に靴を見張っている。彼の目の前に靴を置けば金をとられる。これは彼の仕事である。でも、私には必要ない。だ…

少年の大きく澄んだ目

フィリピンに行ったのはピースボートのツアーだった。ピースボートは、1983年に日本の戦争の跡を見て回ることから始まったNGOで、国際交流のツアーを主催する。そのフィリピンツアーでは、日本のODAによる開発で環境破壊が進んでいる地域や、孤児院、日本人…

諦めた目

昨日行き損ねたラージ・ガートに向かった。リクシャーが信号で停まると、物乞いの親子が近づいてきた。少年が左側から、乳飲み子を抱えた母親は右側から手を差し延べた。少年は大きく澄んだ目でしっかりと私を見つめた。母親は視線が定まらず、周囲を見回し…

フルーツジュース屋

シルバーパレスに別れを告げて、メインバザールに出ると、また無性にフルーツジュースが飲みたくなった。小気味よくミキサーをかけるおじさんは、私が近づいていくと、‘まあ中に入れよ’と招き入れた。中は三人入れば一杯になってしまう狭さだ。すでにいた二…

帽子を持って行った少年

「両替はできたか」 KUMAR が私を迎えた。 「ああ、大丈夫だ。ありがとう。金も返すよ」 「リクシャーは幾らで行った?」 「教えてもらった通り、五十ルピーで行ったよ」 二人で雑談をしているときに、一昨日深夜まで待っていてくれた少年が来た。日本でいえ…

宣伝男

メインバザールに戻った頃には、ニューデリーはすっかり強烈な暑さを取り戻していた。喉はすぐにからからになる。そこでずっと気になっていたフルーツジュース屋に入った。暑い国に行くとこのフルーツジュースがたまらなく、うまい。タイ、マレーシアでは屋…

アショーカホテル

日曜の朝の道は空いている。リクシャーは軽快にとばした。バイクタクシーも気持ち良くとばしている。バイクタクシーは客をバイクの後ろに乗せるタクシーだ。つまり、ただの二人乗りである。運転手にはターバンを巻いたシーク教徒が何故か多かった。その宗教…

クマール

翌朝はまず両替をしなければならなかった。昨日の両替では金額が小さすぎて、カルカッタへの移動を考えると今日使う分には足りそうになかった。しかし、その日は日曜日だった。でかいホテルでないと両替できないだろう。フロントに行ってネパーリーに聞いて…

混沌

ニューデリー駅に着き陸橋を登った。踊り場には目の見えない笛吹きがいた。子供の頃、駅の地下道で、戦争で足を失った人がハーモニカを吹いていたのを思い出した。笛吹きはまだ若く、痩せてはいたが弱ってはいなかった。私は写真を撮りたくなった。せめても…

歩いて見える風景

こうなったらついでにメインバザールまで歩いてしまおう。どんどん思わぬ事態となってきたが、歩くのも面白いだろう。 そうとなれば、まずは現在地を確かめねばならない。地図を見ると、デリー門を左に曲がれば後は道なりでメインバザールに着く。デリー門は…

ガンジーの家(Gandhi Smriti Museum)

しかし、ガンジーの家に着いてみても、すでに門は閉まっていた。中を覗けば最後の客達がガイドに連れられて庭を歩いている。来るつもりは無い所だったが、このままで帰りたくはなかった。今日一日が切符探しで終わってしまう。それに、入れないとなると余計…

リクシャーに乗って

宣伝男をまたやり過ごして、リクシャーを捕まえた。痩せた、人の良さそうな笑い顔をするおっさんだった。彼は焦っていた。よっぽど儲かっていないのだろうか。とりあえず自分の客にしてしまおうと、‘いいから乗んなさい’とうんうん頷きながら腕を押した。で…

ほっと一息

デリーに戻る航空券を取りに行ったときは、約束の十時をとうに過ぎ、二時をまわっていた。 「遅かったじゃない」 子供を抱えたおばさんは私を持ちわびていた。おとといとは違い、ばっちり目は覚ましていたが、やっぱり眠そうな目をしている。 「彼(主人)は…

暑いメインバザール

メインバザールに戻った。騒がしい、暑苦しい、むさ苦しい。いろんな連中がごった返している。歩きだすなり、太ったおばさんが私の袖をひっつかんだ。何かのマークの布切れをシャツにつける気だ。 「な、なんだよ!?」 おばさんは無言。表情も変えない。た…

別世界のコンノート・プレイス

駅はごったがえしていた。そこら中に人が座っている。インドでも休暇の時期なのだそうだ。寄ってくる闇両替や物乞いを受け流して、二階の外国人用の窓口に行った。だが、やはり空席はなかった。こうなったら飛行機しかない。とにかく東に向かわぬことには話…

怒られたシヴァ

足早に小道を歩き、宿のSilver Palace Hotelの前まで来ると、中から少年がドアを開けた。私を待っていてくれたのだ。 「遅かったじゃない」 半分眠そうに、半分笑って少年は言った。 「ごめん」 少年はドアに鍵をかけた。フロントで寝ている人を踏まないよう…

インドが好きか

シヴァは、最初に寄ったコーラを飲んだ店でまた停まった。この店の印象は良かったし、十一時を過ぎ腹も減ってきたので、今度は降りた。イスに座るなりシヴァは主人に何か話している。どうやら私の機嫌が悪いと伝えているらしい。身振りから前の店では車から…

日本以外で死にたくない

シヴァは昼飯を食べたサイババのいる店に寄った。睨み付けてふっかけてきた店だ。冗談ではない。腹も減っていないし、シヴァのためにビールを奢る気なんかまったくない。タイや中国では、よくしてくれた人にばんばん奢ったが、シヴァには嫌だ。私は車から出…

彼はインド人で私は日本人

もはやシヴァは私に土産を買わせることを諦めた。 「車を直すから、ちょっと停まる」 朝から悩まされているオーバーヒートだ。砂ぼこり舞う広場に入ると、何台かの車と何人かの男、それに掘っ建て小屋が見えた。自動車整備場だろう。様子見に外に出ると、シ…

カーペット屋の手口

気を取り直したところで、もう一度タージマハールに行きたかった。 「タージマハールに行ってくれ」 「タージマハール?」 シヴァは、またか、という顔をした。そう、また行きたいのだ。気持ち良くタージマハールを見たいのだ。 しかし、次に停まったのは土…

アグラ城

次に訪れたアグラ城でもまだ気分はすっきりせず、赤砂岩でできた大きく風格のある城も、ただのつまらぬ建物にしか見えなかった。 そんな気分を和らげてくれたのはチャイ屋(インドではミルクティー)のおやじたちだった。 「おーい、一杯やってけよ」 仲間同…

それがインド It’s India

住宅地に入ったところにその店はあった。二台程入る駐車場に車を停め、一人が通れる位の入口から中に入った。店内は広々として綺麗だった。石や装飾品がガラスケースの中にずらりと並べられている。様々な種類があり、買う気はなくても眺めてみればそれなり…

夕暮れのタージマハールを見たい

スルタン・サラフディン・アブドゥル・アジズ・シャー・モスクの体験が強烈すぎたのだろうか。これと同等のものをどこかで期待していたのだろうか。タージマハールを見た時の感動は思った程ではなかった。整備された庭園に白いモスクは映えていたし、裏側に…

スルタン・サラフディン・アブドゥル・アジズ・シャー・モスク

その日は朝からうまく行かなかった。マラヤ大学に行くためのバスに、すんでのところで乗り遅れ、二時間も待った。モスク行きのバスターミナルも最初間違えた。一度は案内所で確かめたのだが、なかなか来ないのでもう一度念のために聞いてみると、違うバスタ…