目的地へ行こう

まだたどり着いていない人のブログ。

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2017-07-01から1ヶ月間の記事一覧

怒られたシヴァ

足早に小道を歩き、宿のSilver Palace Hotelの前まで来ると、中から少年がドアを開けた。私を待っていてくれたのだ。 「遅かったじゃない」 半分眠そうに、半分笑って少年は言った。 「ごめん」 少年はドアに鍵をかけた。フロントで寝ている人を踏まないよう…

インドが好きか

シヴァは、最初に寄ったコーラを飲んだ店でまた停まった。この店の印象は良かったし、十一時を過ぎ腹も減ってきたので、今度は降りた。イスに座るなりシヴァは主人に何か話している。どうやら私の機嫌が悪いと伝えているらしい。身振りから前の店では車から…

日本以外で死にたくない

シヴァは昼飯を食べたサイババのいる店に寄った。睨み付けてふっかけてきた店だ。冗談ではない。腹も減っていないし、シヴァのためにビールを奢る気なんかまったくない。タイや中国では、よくしてくれた人にばんばん奢ったが、シヴァには嫌だ。私は車から出…

彼はインド人で私は日本人

もはやシヴァは私に土産を買わせることを諦めた。 「車を直すから、ちょっと停まる」 朝から悩まされているオーバーヒートだ。砂ぼこり舞う広場に入ると、何台かの車と何人かの男、それに掘っ建て小屋が見えた。自動車整備場だろう。様子見に外に出ると、シ…

カーペット屋の手口

気を取り直したところで、もう一度タージマハールに行きたかった。 「タージマハールに行ってくれ」 「タージマハール?」 シヴァは、またか、という顔をした。そう、また行きたいのだ。気持ち良くタージマハールを見たいのだ。 しかし、次に停まったのは土…

アグラ城

次に訪れたアグラ城でもまだ気分はすっきりせず、赤砂岩でできた大きく風格のある城も、ただのつまらぬ建物にしか見えなかった。 そんな気分を和らげてくれたのはチャイ屋(インドではミルクティー)のおやじたちだった。 「おーい、一杯やってけよ」 仲間同…

それがインド It’s India

住宅地に入ったところにその店はあった。二台程入る駐車場に車を停め、一人が通れる位の入口から中に入った。店内は広々として綺麗だった。石や装飾品がガラスケースの中にずらりと並べられている。様々な種類があり、買う気はなくても眺めてみればそれなり…

夕暮れのタージマハールを見たい

スルタン・サラフディン・アブドゥル・アジズ・シャー・モスクの体験が強烈すぎたのだろうか。これと同等のものをどこかで期待していたのだろうか。タージマハールを見た時の感動は思った程ではなかった。整備された庭園に白いモスクは映えていたし、裏側に…

スルタン・サラフディン・アブドゥル・アジズ・シャー・モスク

その日は朝からうまく行かなかった。マラヤ大学に行くためのバスに、すんでのところで乗り遅れ、二時間も待った。モスク行きのバスターミナルも最初間違えた。一度は案内所で確かめたのだが、なかなか来ないのでもう一度念のために聞いてみると、違うバスタ…

タージマハール

子供の頃一番好きだった建造物は、タージマハールだった。歴史の教科書で初めて写真を見たとき“なんて美しいんだ”と感動した。美しいなんてことはあまり感じないほうなのだが、タージマハールは心底美しいと思った。そして、一度は本物を見てみたい、そう思…

シヴァは味方か

昼飯を食べはじめたときは、すでに二時をまわっていた。出発してからもう四時間が過ぎている。高級車の方はあいかわらず不調で、シヴァはせっせとラジエーターに水を入れた。道の先に町らしきものは全然見えない。タージマハールをゆっくり見ている時間はあ…

ひっくり返ったトラック

何にもない所にひたすら延びている道を、車は時速六十~七十キロメートル位で走った。その私たちを‘HORN PLEASE’と後部に書いたトラックがどんどん抜き去っていく。今やホーンを鳴らされ脇に避けているのは高級車の方である。抜いていくトラックは全て完全な…

シヴァ

運転手は小柄で痩せた男だった。「名前は?」と聞くと、黙って首を振った。(当時)歳は私と同じ二十七歳。体つきは子供のようだが、口髭を生やした顔は歳相応に見える。名無しの彼は、少しふっくらさせればシヴァ神に見えないこともない。だからシヴァと呼…