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シヴァは味方か

 昼飯を食べはじめたときは、すでに二時をまわっていた。出発してからもう四時間が過ぎている。高級車の方はあいかわらず不調で、シヴァはせっせとラジエーターに水を入れた。道の先に町らしきものは全然見えない。タージマハールをゆっくり見ている時間はあるのだろうか。

 食事はまず生野菜がでてきた。これを食べると腹を壊すか寄生虫がわく。ここの便所は汚物が散らばり、強烈な匂いだった。さらに尻を洗う水は濁っていた。こんな所の生野菜を食べたら一発でアウトだ。サイババみたいな容貌のウェイターがにこやかに勧めたが、手はつけなかった。こういうところで、一番無難な食事はフライドライスだ。すなわち炒めご飯である。火はばっちり通っているし、味も日本で慣れ親しんだものと大きくは変わらない(他の料理に比べれば)。外国で困ったときはフライドライスを食べることにしている。飲み物はまたコーラにした。喉は乾ききっていて、ぐぐっと三本位飲みたい気分だった。コーラにはまたストローがついていた。でも、テントで日が当たらない奥の特等席に丁重に案内され、大型扇風機を真正面に置いてくれたおかげで、油断をしていると、ストローが風で飛んでしまいそうだ。強風を顔面に受けながら飲み食いするさまは、日本なら滑稽なものなのだが、インドでは特等席になるのである。ビールはシヴァにもサイババにも勧められた。しかし、アグラに早く着きたかったので断ったのだが、店としては、稼ぎ所の日本人がたいして注文しないので面白くなかったのだろう。最初にこやかだったサイババは、急に態度を変え他の連中と私の方を睨み付けている。そして、支払いとなると、露骨に連中は敵対的な態度をとり、相場の倍位にふっかけてきた。シヴァと一緒だからと油断して値段を確認して注文しなかったから、後からの抗議は難しい。シヴァはというと、私のジュース代を出した最初の休憩とはうってかわって、自分の食事の支払いをするでもなく、ふっかけられている私の手助けをするわけでもなく、それを横目で見ながらさっさと便所に入った。車に戻ってからも、“ありがとう”の一言もない。やはり、こいつは油断してはならない。最初にジュースをおごったシヴァの計算が垣間見えてきた。

 

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 ひたすら続く田舎道。牛追いに率いられた牛の群れが、道の半分を占領する。ひかれた野良犬からは内臓が飛び出していた。べっとりとした汗が肌とシャツをくっつける。強い日差しは気温を四十度以上に上げる。蒸し風呂の高級車がアグラに着いたのは、出発して六時間後、午後四時だった。